薬学部出身として、医薬品を作りたいという気持ちから、製薬企業を目指す人は多いのかなと思います。
実は、製薬業界以外にも、医薬品を研究開発しているメーカーがあります。
それは、「化学メーカー」です。
本記事では、化学メーカーが医薬品の研究開発をする理由と、その企業を紹介していきます。
さらに、各社の業績・注力領域・パイプライン・関連企業も紹介していきます。
業績は現状の企業規模を、パイプラインはこの先数年の企業の伸びを考えるために指標となります。
化学メーカーが医薬品の研究開発をする理由
医薬品は不況に強く、利益率が高い
化学メーカーは、世界同時不況で業績が急激に悪化した一方、医薬品業界は不況に強く、業績は変化しませんでした。
なぜなら、一般の製品やサービスは景気の状態によって需要が変化しますが、病気を治す医薬品は景気の状態によって需要は変化しないためです。
日本には、皆保険制度があり、「景気が悪くても診察を避ける傾向はあまりない」と言われています。
そのため、景気に左右されにくく安定した収益の柱として、化学メーカーは医薬品の研究開発を進めている。
平均利益率の違い
業界 | 製薬 | 化学 |
利益率(%) | 8.8 | 4.4 |
化学メーカーの技術の中には、医薬品に転用できるものが多い
各メーカーは特色ある強みを生かして、製薬会社と差別化した研究開発をしている。
例えば、
富士フィルムの事業変革は化学業界にインパクトを与えた。主力製品であった写真用フィルムのニーズが減少していく傍ら、フィルムで培ったナノテクノロジーを利用し医薬品・化粧品事業で収益を上げている。
また、協和発酵キリンは、元々は協和発酵工業とキリンファーマが合併して出来た。キリン側のビール事業で培った発酵技術と協和発酵側のバイオ技術が融合したことで、安定した抗体医薬品を創出を実現し、他社にはない強みとなっている。
このように、化学メーカーは特色ある開発力を活かして、医薬品の開発を目指している。
医薬品の研究開発をする化学メーカー
旭化成
売上
2017年度の売上高は、
- 20,422億円
- 2,963億円(ヘルスケア事業)
注力領域
- 整形外科
- 救急、集中治療
- 免疫
- 泌尿器
- 中枢神経
パイプライン
- 国内のパイプライン
開発コード・剤型(一般名) | 薬効・分類 | 適応症 | 自社/導入 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
申請中 | MN-10-T AI・注 (テリパラチド酢酸塩) | 骨粗鬆症治療剤 | 骨折の危険性の高い骨粗鬆症 | 自社 | 剤形追加 用量追加 |
フェーズⅢ | ART-123・注 (トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)) | 血液凝固阻止剤 | 特発性肺線維症の急性増悪 | 自社 | 効能追加 |
AK1820・注、カプセル (イサブコナゾニウム硫酸塩) | 深在性真菌症 治療剤 | 深在性真菌症 | 導入 | ||
フェーズⅡ | ART-123・注 (トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)) | 血液凝固阻止剤 | 化学療法誘発性末梢神経障害 | 自社 | 効能追加 |
- 海外のパイプライン
開発コード・剤型(一般名) | 薬効・分類 | 適応症 | 自社/導入 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
申請中 | フリバス・錠(ナフトピジル) | 排尿障害改善剤 | 前立腺肥大症に伴う 排尿障害 | 自社 | |
フェーズⅢ | ART-123・注(トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)) | 血液凝固阻止剤 | 凝固異常を伴う 重症敗血症 | 自社 | |
HE-69・錠(ミゾリビン) | 免疫抑制剤 | ループス腎炎 ネフローゼ症候群 | 自社 | 効能追加 |
関連企業
- 旭化成ファーマ(医薬事業)
帝人
売上
2017年度は、
- 8,350億円
- 1,554億円(ヘルスケア事業)
注力領域
医療用医薬品
- 骨・関節…骨粗鬆症治療剤 ほか
- 呼吸器…去痰剤、喘息治療剤 ほか
- 代謝・循環器…高尿酸血症・痛風治療剤、高脂血症治療剤 ほか
(高尿酸血症・痛風治療剤➝国内トップシェア) - その他… 重症感染症治療剤、緩下剤 ほか
パイプライン
- 高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」のグローバル展開
- パイプラインの情報を見つけることが出来なかったため、フェブリクの特許が切れたら厳しいのではないでしょうか。
関連企業
- 帝人ファーマ
東レ
売上
2017年度の売上高は、
- 22,049億円
- 538億円(ライフサイエンス)
注力領域
- 神経疾患(痛み、痒みおよび神経変性疾患)
- 腎・自己免疫・癌
パイプライン
開発コード・剤型(一般名) | 適応症 | 自社/導入 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
開発段階 | TRK-170 | 炎症性腸疾患 | 自社 | 低分子 |
TRK-560 | 肝炎や多発性硬化症 | 自社 | 生物医薬 |
富士フィルム
売上
2017年度の売上高は、
- 24,344億円
- 4,430億円(ヘルスケア事業)
注力領域
- がん
- 中枢神経
- 感染症
- 次世代医薬品
- 放射性医薬品
パイプライン
- 国内のパイプライン
開発番号 一般名 | 薬効・適応症 | |
---|---|---|
フェーズⅢ | T-4288(ソリスロマイシン) | 新規フルオロケトライド系抗菌薬 |
ファビピラビル | 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬 | |
フェーズⅡ | F-1311 | 前立腺がん診断薬(放射性医薬品) |
T-817MA | アルツハイマー型認知症治療薬 | |
F-1614(3-ヨードベンジルグアニジン(131I)) | 難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品) | |
フェーズⅠ/Ⅱ | F-1515(Lutetium(177Lu) oxodotreotide) | 神経内分泌腫瘍治療薬(放射性医薬品) |
- 海外のパイプライン
開発番号 一般名 | 薬効・適応症 | |
---|---|---|
承認申請中(中国) | T-3811(garenoxacin) | キノロン系合成抗菌薬 |
ファビピラビル | 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬 | |
PhaseIII(米国) | T-705(favipiravir) | 抗インフルエンザウイルス薬 |
PhaseII(米国) | T-817MA(edonerpic maleate) | アルツハイマー型認知症治療薬 |
PhaseI(米国) | T-2307 | 抗真菌薬 |
関連企業
- 富士フイルム富山化学
日東電工
売上
2017年度の売上高は、
- 8,562億円
- 361億円(ライフサイエンス事業)
注力領域
- 経皮吸収型テープ材
- 核酸医薬
パイプライン
具体的には、よくわからない。
経皮吸収型テープ製剤(医薬品)のクロニジンパッチ(高血圧症治療薬)が米国で新たに認可を取得。
経皮吸収剤に加えて、バイオ医療の分野でも着実に研究を進めている。
日本化薬
売上
2017年度の売上高は、
- 1,678億円
- 475億円(医薬事業)
注力領域
- がん
- ジェネリック抗がん薬
- バイオシミラー
新製品開発状況(パイプライン)
開発コード・剤型(一般名) | 薬効・分類 | 自社/導入 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
フェーズⅢ | CT-P10(リツキシマブ) | 抗CD20ヒト化モノクローナル抗体抗悪性腫瘍剤(非ホジキンリンパ腫等) | 他社 | バイオシミラー (バイオ後続品) |
フェーズⅡ | NK105(パクリタキセル内包 高分子ミセル) | 抗悪性腫瘍剤(乳癌) | 自社 | 抗がん薬内包高分子ミセル |
NK105(パクリタキセル内包 高分子ミセル) | 抗悪性腫瘍剤(胃癌) | 自社 | 抗がん薬内包高分子ミセル | |
NK012(カンプトテシン類内包高分子ミセル) | 抗悪性腫瘍剤(乳癌、肺癌、大腸癌、多発性骨髄腫) | 自社 | 抗がん薬内包高分子ミセル (FDAオーファンドラッグ指定 小細胞肺癌) | |
再検討中 | EO9(アパジコン) | 抗悪性腫瘍剤(膀胱癌再発予防) | 自社 |
日産化学
売上
2017年度の売上高は、
- 1,934億円
- 75億円(医薬事業)
注力領域
- 神経疾患
- 循環器疾患
新製品開発状況(パイプライン)
開発コード・剤型(一般名) | 薬効・分類 | 自社/導入 | |
---|---|---|---|
フェーズ? | NIP‐022 | 血小板減少症治療薬 | 自社 |
フェーズ? | NTC‐801 | 不整脈治療薬 | 自社 |
タカラバイオ
売上
2017年度の売上高は、
- 323億円
- 5億円(医薬事業)
注力領域
- 遺伝子治療
新製品開発状況(パイプライン)
- 国内のパイプラン
開発コード・剤型(一般名) | 薬効・分類 | 自社/導入 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
フェーズⅡ | HF10(TBI-1401) | 悪性黒色腫 | 自社 | |
フェーズⅠ フェーズⅠ/Ⅱ | HF10(TBI-1401) | 膵臓がん | 自社 | |
NY-ESO-1(TBI-1301) | 滑膜肉腫 | 自社 | siTCR | |
固形がん | 自社 | siTCR | ||
MAGE-A4(TBI-1201) | 食道がんなど | 自社 | siTCR | |
CD19・CAR(TBI-1501) | 成人ALL | 自社 | CAR | |
小児ALL | 自社 | CAR |
就職活動は視野を広く持とう
製薬会社の研究職は非常に採用人数も低く、厳しい門です。
しかし、製薬会社以外でも医薬品の研究職として働くことが出来るので、ぜひ視野を広くして就職活動に臨んでもらえれば幸いです。
各社、研究職のインターンシップも開催しているので、参加してどのような研究を行っているかを理解してみましょう。